「デリコズ・ナーサリー」五話までの感想

 

 

最新話まで見たので感想書きます。

前回と違ってネタバレ配慮はしていないので注意。

 

第四話「愛という名の呪い」

 

TRUMP(吸血鬼の始祖)についての解説回。

 

TRUMPって神さま扱いされるくらいなんだから、もっと超常的な存在だと思っていたけれど、永遠の命を持つゆえの希死念慮から情緒不安定であり、彼の機嫌の影響で吸血鬼たちの大量自殺事件が引き起こされるなど、厄介な存在だということが明かされる。

エンリケの「まあそこは子守と一緒だね」という言葉通り、TRUMPの機嫌を窺うことがヴラド機関の仕事の一つだと言われるほど。

 

序盤で軽く説明されていた「イニシアチブ」について本格的な解説が入る。

吸血鬼は噛んだ者⇔噛まれた者の間で絶対的な服従関係ができる。噛んだ者が「自害しろ」と命じればその通りに自害するくらい。

上記のTRUMPによって大量自殺事件が引き起こされたのも、TRUMPは吸血鬼全員との精神的なつながりがあり、絶対的上位にいるためにイニシアチブ的な現象によって自死が引き起こされたよ~という感じらしい。

そのくせTRUMP自体の所在地や正体はほとんどの吸血鬼には秘匿されているなど、こんなん対処のしようがないやん状態。

無関係な一般吸血鬼からすると迷惑極まりない存在。

 

直後に敵陣営の作戦会議シーンが入る。

ヴラド機関のナンバー2(モーリス卿)をイニシアチブを使って服従関係にし、スパイ行為をさせて情報を集めているのが明かされる。

敵陣営のそれぞれの性格も分かってきていよいよ楽しくなってきましたわ~。

やっぱり敵側にいるオカマキャラっていいね。

クレしんでも敵がオカマだった時の面白さは随一だったし。

 

ここで主人公陣営がイニシアチブについて語るのと対比するように、敵陣営が「アンチ・イニシアチブ」について語り始める。

イニシアチブで絶対的な服従関係になるといっても、TRUMPに関する情報だけは易々と漏らさないようにされているらしい。それがアンチ・イニシアチブ。

これは元から備わっている機能ではなく、ヨハネス・ヴラド卿(ヴラド機関のナンバー1)によって噛まれて備わったイニシアチブっぽい?

ヴラド機関の全員が一度はヨハネス卿に噛まれたことがあるのかと思うと耽美っぽい絵になりそうですわね~。

 

ダリの子供、ラファエロのイヤイヤ期のシーンの後にまた敵陣営の作戦シーンが挟まれる。

敵陣営シーンと子守シーンが交互に流されるのは、意図的な構成?

やっぱりこうやって緩急をつけてくれると展開にメリハリがあって良い。

前回の感想記事で「シリアスなシーンがあるからこそ、子育てシーンのほのぼのさ、子供たちの可愛さがより強調されていきそう」と書きましたが、その通りになってくれて嬉しい。

 

被害者が出続けているのに静観を決め込むヴラド機関について「誰が何人死のうがお構いなしって感じ?」と敵が冗談交じりに話していたが、確かに事実なんだよな。

事件現場や被害者を見てダリたちが悲壮な表情を見せるわけでもないし。

TRUMPの情報を漏らしてはいけないが故の対応であると分かっていても、視聴者の中には倫理的に受け付けられない人もいるのかな。

 

ゲルハルトとダリによる口喧嘩シーンも入る。

「貴殿はなぜそこまでして子育てに執着する!?」 ←このゲルハルトの言葉そのままそっくり「貴殿はなぜそこまでダリに執着する!?」って言い返せるだろってツッコミたい

フリーダ(亡くなったダリの妻)の呪いに縛られすぎている、というゲルハルトの指摘。

イニシアチブによる服従を丸々一話使って解説した後にこれをお出しされると、奥さんからの願いもイニシアチブ並みにダリを縛り付けてるだろ、という気持ちにもなる。

まあ強制的に自害や殺害を命じることもできる種族の中で、そういった制約無しに奥さんの願いを叶えてあげたい、それによって家族の絆的なものを証明したいと考えている(推測)ダリくんの気持ちも分かる。

 

で、モーリス卿が敵陣営に情報を漏らしまくったのが判明し、ヴラド機関に拘束される→しかしイニシアチブによって自害。

敵側に情報漏れまくってるの草。 

ヴラド機関、物々しい施設まであるくせに機密情報管理はガバガバすぎる。現代の一企業なら炎上してるゾ。

余談だけどモーリスの代役になった眼鏡の兄ちゃんかっこいい。声鳥海かな?

情報漏洩のせいでいつデリコズ・ナーサリーが襲撃されてもおかしくない、ナーサリーは終わりだという宣告。

 

最後に、エンリケ家の双子ちゃんがテオドールをおままごとに誘うも、すげなく断られたシーンで終わる。

テオドールとラファエロの問題点は散々クローズアップされてるんですけど、その割に双子の問題点はあんまり出てないね(やんちゃすぎる部分はあるけど流されがち)

無敵感というか、二人一組だからこその全能感から、勝手に突っ走っていって事件に巻き込まれたりするのかな。

OPでエンリケの制止の手を振り切って駆けだしていく双子のカットが挟まれるし、それ以外の日常シーンでも二人で追いかけっこしてるシーンが多い。

 

ここでようやくはじめてEDを見る(ネトフリだといつの間にかスキップされちゃうから……)

洞穴の奥へと景色が変わりながらも、ダリが奥の暗闇へ進んでは消えていく絵が何度も繰り返される。

ループ物の示唆? 

最後だけはこちらを振り返らずにまっすぐ暗闇の奥へ進んでいくダリ。

 

 

五話「第二のナーサリー」

 

敵陣営のジュラスとキースの出会い編っぽいシーンから始まる。

「ずっと繭期でいたいだけだ」と主張するキースが錠剤を飲んで繭期のぶり返りを起こす。

繭期ってぶり返りを起こせるものなんだ!? という印象。

人間の少年期~青年期みたいに、経過によって絶対に変わってしまう物なんだと思っていた。

この「ぶり返し」という言葉、前話でラファエロの「赤ちゃん返り」がクローズアップされた後なので対比なのかな。

吸血鬼の特異性をこれまで語ってきたけど、結局は赤ん坊の成長に似た部分もあると言いたいのかも。

 

情報漏洩を機に、ヴラド機関のメンバー全員が安全地帯に避難するよう指示がされる。

ナーサリーも乳母たちと一緒に隠れ家的なところでひとまとめにされる。

ヨハネス・ヴラド卿をおとりにして敵を誘い込もう、というダリの作戦が挙げられるが、それを実行するより先にまだ避難指示に従っていないのが一人いるということで、そのウンベルト卿の屋敷に直談判しに行く主役四人。

 

ウンベルト卿とゲルハルトとダリとで、学生時代の頃の話、繭期の話で盛り上がります。

ゲルハルトとダリは学生時代、主席争いしてた二人という印象を周囲から持たれていたらしい。背景で流れるシーンでは喧嘩してるっぽい二人が。

「僕とダリが親友!?」「照れるなって」「誰がこんな奴と!? 照れてなどいない!」というお決まりの会話も挟まれる。

 

ゲルハルトが「繭期の頃の自分など思い出したくもない」と言う。

これまで自分は、繭期は人間で言う少年期・反抗期みたいな意味合いなのかと思っていたけど、なんか生物的にもけっこう変化があるらしい。

不良の頃を思い出したくない・黒歴史中二病、的な意味かと思ってたら、後のシーンで「あたしは繭期だからこんなこともできるんだよね」的な言葉があり、また前話で「繭期は妄想や幻覚は珍しいことではない」と語られる。

肉体の強度や狂暴性が上がる&深刻な情緒不安定にもなる?

テオドールのあの幻聴も、本人のアダルトチルドレン的な教育のせいかなと思ってたけど、そこにプラスして早熟すぎて繭期に足を踏み入れてたりする?

 

そのあと敵陣営が勢ぞろいで、ウンベルト卿の屋敷にカチコミに来る。

催眠ガスが巻かれた中で、眠らないようにとエンリケ・ディーノが自分の舌を噛んで眠気に耐える。

飛び込んできたキキちゃん、マスクして催眠ガスが効かないようにしてたの、そんな物理的な防御でええんや草となった(もっと魔法的なもので防御するのかと……)

 

ここからエンリケ・ディーノVSキキ・アブラハムと、ダリ・ゲルハルトVSキース・ジュラス・カタリナの戦闘に入る。

アクションシーンは思っていたよりもいい。

やっぱり画風によるものか、肉弾戦より剣舞の方が絵的に映えますね。

でもエンリケとディーノが秒でやられたのは草だった。

 

ウンベルト卿が敵陣営に囚われる。

ウンベルト卿が狙われたのは、人質というよりも「繭期時代からヨハネス・ヴラド卿に対してずっと二番手だった。その忠誠心の揺らぎがあるなら、ヨハネスのアンチ・イニシアチブを敵陣営のイニシアチブが上回るのでは?」ということらしい。

はえ~~~~~イニシアチブって忠誠心みたいな精神的なものに寄っても効きが変わるんか……。なんかDNAの書き換えレベルで強制力あるもんかと……。

 

しかしながらウンベルト卿、噛まれる前にその場で自害

敵陣営は作戦失敗ということで撤退。

ウンベルト卿の死体のまぶたを下ろしてあげるダリ。

ダリは前話で「イニシアチブのような強制力無しに紡がれる絆」に執着していたけど、今回ウンベルト卿が自分の意志による自害をしたことで、目の前で証明されたそれに思うことがあったのかもしれない。

これまでイニシアチブによって自害するキャラを立て続けに見せられてきたせいで余計に思う。

 

ウンベルト卿は「吸血鬼の誇りにかけて逃げ回りたくない」と避難するのを嫌がって手を煩わせてたけど、最後には「吸血鬼の誇りにかけて情報は漏らさない」と言って自害したので終始一貫していて良かったですわね。

 

 

四話・五話は、TRUMPについてと、イニシアチブ、吸血鬼の社会構造・生態についての説明回だった。

ストーリーの進展もあったので、満足感高いです。

展開がスピーディーだったのも嬉しい。三話までがスロースタートだったので、これくらい詰め込んでサクサクされても見やすいですね。

元から丁寧で新設設計なアニメなので、詰め込まれても情報が整理されているのが制作人の手腕の高さを感じる。

 

しかしこうしてみると、TRUMP世界における吸血鬼という存在の歪さが浮き彫りになってきますわね。

そもそもがTRUMPという絶対的上位の機嫌ひとつで、あっけなく自死をさせられたりする中で、イニシアチブのような理不尽な服従要素もある。

そこに繭期のような、肉体的精神的な不安定期も加わってくるらしいし。

 

繭期自体が幻覚・妄想はよくあることと言われて、吸血鬼そのものの肉体の強度が高そうだし、そこに破滅願望や狂暴性も高そうなわけで、それらが人と同じくらいの社会を築いてヴラド機関みたいなものまで作って協力していくためには、クランという学園寮的なところで無理やり集団生活をさせて社交性を身に着けさせていくしかないんかなあと理解できる。

 

人間の思春期と同じくらい、もしくはそれ以上に精神的に荒れるだろう時期に、イニシアチブのような生物としての服従要素まで加わったら、歪さを持ってしまうのも仕方ない気がする。

 

永遠の命を持つ始祖(TRUMP)に自分のすべてを握られているのかと思うと、キースのように反抗したくなるのも自暴自棄になるのも分かる。

神をぶっ壊してやる、とも言っていたしTRUMPへの忠誠心を示すいけにえ的儀式に見せかけて、TRUMPへの反抗・殺害(可能かは分からないけど)による支配からの解放を求めているんだろうなあみたいなことは感じる。

 

当初、デリコズ・ナーサリーは男性の子育てほのぼの記と殺人事件の捜査が並行されていく内容だと思い込んでいた。

しかしここにきて、「吸血鬼という種族の根底への切り込み」が加わったことで、一層の濃さが出てきたのが個人的にすごく好きですね。

耽美な画風と特徴的な作画が、世界観に視聴者をのめり込ませるのに必要なパワーをちゃんと持っていて、異様な種族性を描き切っているのがすごく良いです。

 

以降の話も、同じような濃密さで展開してほしいな~~という気持ち。

 

 

 

おわり