最近「あゎ菜ちゃんは今日もしあわせ」という漫画を読んでいる。となりのヤングジャンプで連載されている漫画です。
第一話がバズっていた際にその話だけ読んで、それから数カ月は存在を忘れていたんだけど、ふと思い立ってこの漫画をまた読み始めた。
無料開放期間だったらしく、となりのヤングジャンプのページに今日飛んだら、かなりの話数が「公開終了まで3日」と表示されていた。
あゎ菜ちゃんは良い。
一つずつのエピソードが短いのも良い。
というか、一話一話が短くないと「毒」の濃さが強すぎて読者の肉体が耐えられなくなりそう。
あゎ菜ちゃんは可愛らしい絵柄とポップな描写でオブラートに包んでいるだけで、結構な毒というか鬱要素がある。
なんというか、真に迫る鬱っぽさ、窮屈さ、キャパの無さ、ぼんやりとした不安……みたいなものを感じる。
それが作者の手腕によっていい感じに薄められている。
頭の足りない小動物を、ケージ越しに眺めてニヤニヤしているような愛おしさといじらしさを感じられて良い。
しかし一瞬でも冷静になると、あゎ菜ちゃんを読んでいる側の我々にまでその憂鬱さが迫ってきそうな絶妙な暗さもまたある。
一番すきなエピソードは、第3話の「はいきのやつをもらったよ」
バイト先のコンビニでカップラーメンをもらったあゎ菜ちゃんが、あまりの辛さに食べるのを断念しそうになる回。
最終的には、冷蔵庫の奥に眠っていた「賞味期限が二週間過ぎたポテトサラダ(業務用)」をカップラーメンの中にぶち込んで、その冷たさとクリーミーさで中和して完食するというオチ(実際はあまり中和できてないが……)
この回はあゎ菜ちゃんのかわいらしさ、いじらしさも魅力なのだが、一番の魅力は読者が正気に戻りかけそうになるシーンが多々挟まれているところだと思う。
そもそもとして出だしの展開が「廃棄弁当をもらってみたいけど、それを店長に言い出す勇気がない」というもの。
「まともに仕事もできないのにそんなことばっかり考えてるんだねえ~」とあゎ菜ちゃんの妄想上の店長が言い出すところに、あゎ菜ちゃんの生きづらさを感じさせられる。
そして「賞味期限が二週間過ぎたポテトサラダ」も異様にリアルだ。
スーパーのお惣菜売り場に並んでるようなものではなく、業務用の500gポテトサラダがチョイスされているのが、急に現実が読者に迫ってきたような迫力がある。
業務用ポテトサラダでなければ、コンビニバイトも、仕事ができないことも、優しくしてくれる同僚とさえうまく話せないことも、きらら系ほのぼの漫画のような童話っぽさをまだ保てていたような気がしてくる。
ここらへんは「ご飯は私を裏切らない」にも似ている。
別作者、別媒体の作品なので類似点はあまり無く、唯一の共通点が「食べ物描写が多い」ことくらい(「ご飯は私を~」は完全なグルメ漫画なのだが、あゎ菜ちゃんはおそらく違う)
第二話で「9時間労働1時間休憩の深夜の倉庫バイトと聞いていたのに、実際には1時間半勤務するごとに10分の休憩が挟まれる勤務形態だった。食事をとる時間は無いので休憩のたびにチョコレートひとかけらをお湯で流し込んでいた」というなかなかにパンチの効いたエピソードがお出しされる。
ここらへんの憂鬱さが似ている。
予想を上回る生々しさで殴ってくるのは「ご飯は私を~」の方かな。
「クレーマーの相手をしている方がいい。その間は通常業務が止まっていても怒られない。解決していてもしてなくても、どちらにしても周りの人に労わってもらえる」という発想は私にはなさすぎて当時衝撃だった。
そんな感じの、ここ最近の読書体験です。
これは余談なんだけど、あゎ菜ちゃんの表情描写が時々やけに艶っぽいな……と思っていたら、作者は別媒体でアダルト漫画も連載しているらしい。
やっぱりね!と自分の直観の鋭さを褒めたたえておいた。
おわり